皆さん、従業員5人未満の零細企業の新卒の離職率はご存知でしょうか。また、大企業との差はわかりますか。

正解は59.2%で、従業員1000人以上の大企業は20.5%です。およそ4割もの開きがあります。(ちなみに、数字は2012年のものです。)

参考:
大卒3割が3年以内に退職、小企業は5割超-人材採用・人材育成の人事専門誌/人材紹介の業界誌-日本人材ニュース

この数字をみると、中小企業は離職率が高いことがわかります。

では、なぜ企業規模によって違いが出るのでしょうか。今日はこれを考えてみたいと思います。

 

新卒はリアリティ・ショックをうける

ここで、一般的な新卒が入社したときに起こる出来事を見てみましょう。学校を卒業し、働きはじめた新社会人は、入社して「リアリティ・ショック」を受けます。

新しい環境、「学習する」という立場から「働いて稼ぐ」立場への変化など、様々な刺激と経験が一気に訪れることになります。それに適応するためには、誰だってそれなりにエネルギーを要するものです。そういう新しい環境での適応可否が、その後の離職との関係があるのではないかと思います。

簡単にいえば、新しい環境に馴染むことができれば離職の確率は下がり、逆にうまくいかなければ離職の確率は上がるのでは、ということです。

 

どうやってリアリティ・ショックを乗り越えるか

なぜ若者はすぐに会社を辞めてしまうのでしょうか。その原因を探ろうとした本があります。

就職活動から組織人になるまでの、複数の学生の体験などに基づき、初期のキャリア形成における課題などを考察した本です。この中に、早期離職に関する考察もあります。

その中では、以下の3つが必要ではないかと分析されています。

 

職場適応のためのクッションの期間の重要性

入社前や研修時に同期とのつながりを形成したり、先輩の仕事に同行するなど、新しい環境に適用するための「クッション」となる期間が必要。

一定の研修期間を設け、仕事を覚えたり、慣れるまでの苦労を同期と共有するなど、心理的に馴染む時間を設けることで、うまく適応してもらうということです。

 

職場の上司・先輩による育成の姿勢の重要性

ほったらかしにされては、人は育ちません。いや、育つのかもしれませんが。それでも、会社から育てる姿勢を示されれば、自分を育てようとしてくれている、という印象を持ち、すぐに離職に至るような確率は下がるでしょう。

 

上司・先輩の働き方を具体的に見る機会の重要性

具体的な作業を見て学ぶ機会を設けます。クッション期間とも関連すると思うのですが、実際に上司・先輩が働く機会を見ることで、具体的なイメージが形成されて、仕事に対する親近感を抱けるのではないかと思います。

本書の中では、上司や先輩が営業などで不在にしていることが多く、放置されている状況が体験談として描かれており、「それでは仕事を覚えることも難しいな」と思いました。

 

上記のポイントは、個人的な経験と照らし合わせても、良い意味でも悪い意味でも「なるほどなー」と思ったりします。社会人経験のある皆さんは、どうでしょうか?

 

話は冒頭に戻り、大企業と中小企業との離職率の差は、上記のような仕組みを設けられているかどうかにも関係しているのかもしれません。もちろん、全ての企業に当てはまるわけではありませんが。

ただ、新卒がすぐに離職してしまう原因が、全て学生にあるとは限らないことがわかるんじゃないかと思います。学生もこういう視点で企業を見極められたら良いなと思いますし、企業も学生ももっと理解が進み、不幸なミスマッチがなくなると良いなと、この本を読んで改めて思いました。

僕らの活動を通して、企業と学生のミスマッチをなくし、お互いが信頼して働けるきっかけを作りたいと思います。

 

れいじ